● 土と建築 の 展覧会Rooted in clay が常滑市の「土・どろんこ館」で9/19(2023)まで開かれています。
5/6(土)にトークセッションが行われ、参加してきました。
■アセーナ&ビル・スティーンについて
ビルとアセーナはアメリカ・アリゾナでストローベイル(藁ブロック)や土を使った家づくり
のワークショップを1980年代末から30年以上続けている自然素材建築リバイバルの「伝道師」というべき第一人者。
自分も土の建築を始めたばかりの2001年にワークショップに参加して感銘を受け
その後、土の建築を本格的に手掛ける大きなきっかけになりました。
彼らは土と藁の家づくりにとどまらず、それによる貧困層のコミュニティづくりやこどもたちへのワークショップ、展覧会での展示など「土」を通した社会活動も世界各地で様々、行っています。
その活動とオープンな人柄も含め、二人は自分にとって土の建築で数少ない「師」と呼べる、リスペクトする存在です。
自分がワークショップに参加した時、「どうやったらそんな活動ができるか?」
と聞いたときに「できるよ。やってみな。」という言葉をいただいてとても勇気づけられました。
それからずっと仕事だけでなくプライベートも含め、いろいろと大変な時にその言葉を思い出しては
自分を奮い立たせてきました。
今回なんと22年ぶりの再会となりましたが、会った瞬間即ハグとなり、ふたりとも元気そうで
20年の時間の隔たりを感じず、打ち解けることができました。
私の作品もFBで見てくれているようで、とてもほめていただいてうれしかったです。
■22年前の思い 日本とアメリカの家づくり
若い頃アカデミックな建築への反発と自分の手で建築をつくれないかと思っていた自分は、参加したワークショップやそのとき見たアリゾナの藁や土の家をみて
「何て自由なんだろう!」「日本の家は何て型にはまっているんだろう!」
と大きなカルチャーショックを受け、その思いがその後の自分の「土の家づくり」の大きな原点になっています。
■展示内容
展示は9月まで行われているので、「土の建築」に興味がある方はぜひ訪れていただきたいですが、
3人が公開制作した土の造形物や壁とともにアセーナが自分の「土の建築」に関わってきた経緯や哲学を語る動画があり、その「土と人間、文化」を詩的かつ哲学的に語っており、その深い内容は
やはり「表面的にやっているのではない」と納得させるものがあり、素晴らしいです。
たとえば
プエブロの教え
「永続性」ではなく「関係性と循環」が大事なのだ。
や
何度も補修されてまだ残っているクラックがある土の家のクラックを「何故直さないか?」という問いかけに
「あれは自分が生まれたところに帰ろうとしている。」
という答えが返ってきた。
というところなど、自分は改めて心を揺さぶられました。
■トークセッション
展示を記念してトークセッションが行われ、全国からたくさんの参加者がありました。
今後youtubeでも公開されるとのことです。
今回共同で制作・展示されている現代日本の左官の第一人者の挾土秀平さんも聞き役の雑誌コンフォルトの多田君枝さんもご自身の人生や仕事において、彼らの地アリゾナのカネーロでの体験に「大きな影響を受けた」とのことで、立場は違えど自分も同じでうれしくなりました。
とくに挾土さんの話で一番印象的だったのは
「アリゾナの土の家のほうが、日本の家より豊かさが上」
ということ。
技術的には日本ほど高度ではないが、「何度も手をかけ、つくるのに大変な手間がかかっていること」
そして 「土の厚みが厚く」形も不定形な土の家が「いかに心地よいか」を述べられていましたが、
挾土さんからのこの言葉は、今回それを聞くために行ったと言ってもいいほど自分にとっては大きな発言で、自分が20年前に感じた記憶が「間違ってなかった。」と掘り起こされた感じでした。
「豊かさ」は「技術」だけでなく、「手間」「人の思い」そして「土の力」様々なものの総合
から成り立つのだと改めて感じました。
またビルさん方は挾土さんから教わった日本の左官技術、特に平滑に壁を塗る技術を教わり
覚えたことを感謝されていました。それによって20年前から作品の表現の精度と幅が格段に上がったことは自分も数々の写真を見て作品の進化に驚きでした。
■今後の展示とアリゾナでのワークショップ canelo project
今回公開制作された展示の造形物 とくに亜麻仁油を塗って仕上げたベンチが今後どのように
経年変化していくかや制作の動画も展示されるとのことです。
展示に合わせてつくられたブックレットも非常に充実しています。
https://livingculture.lixil.com/ilm/see/exhibit/rootedinclay/
今後土の家をつくろうとされている方、土の家を志す設計の方、こどもたち・・・
とにかくぜひたくさんの方に訪れていただきたいです。
またぜひ、ビルさんアセーナさんのワークショップにもぜひ訪れてください。
現在はお子さん方が主導でされているようで、土の建築の新たなアイディアも多々得られると思います。
自分も近いうちにぜひ再訪したいと思っています。
https://caneloproject.com/