● 音楽家の坂本龍一さんが3/28に亡くなられて3週間ほど経ちましたが、
自分は未だに大きな悲しみと喪失感に包まれています。
この40年、日本を代表する音楽家としてはもちろん、著作や様々な活動による環境や震災復興の支援や提言など
折に触れて立ち返る坂本さんの音楽や発言は自分にとっても生きる上で大きな指針となっていました。
著作にもなっている哲学者、思想家、学者の方々への問いかけと
哲学を始めあらゆる分野への造詣と博識は自分にとって非常に大きな存在でした。
心から哀悼の意を表します。
亡くなられる2月前には遺作となったアルバム「12」をリリース。
1月前には神宮外苑の再開発の再考を促す手紙を東京都の小池知事他に出され、
2日前にはご自身が音楽監督をされていた3.11の震災を機に結成された東北ユースオーケストラの
公演を聞き入り、メッセージを送るなど、最後まで命を燃やしきる生き方をされたことにも
心を動かされました。
自分にとってあまりにも大きいこの喪失感はどこからくるのだろう?
自分なりに思い当たったのは
アメリカの神話学者ジョゼフ・キャンベルの著作「神話の力」にでてくる
「英雄とは、自分よりも大きな何者かに自分を捧げた人間」
という言葉でした。
そう、坂本さんはまさしく「英雄」だったと思います。
■ 美しさと根源への問い
一度聞いたら忘れられない彼の音楽がなぜ美しいのか?
それは彼の資質と天才性にあるのは間違いありませんが、
私は彼の音楽と芸術に対する真摯な姿勢にあったのではと思います。
「音楽、生命、人間、音、環境・・・」それらの根源に立ち返り、そこから自分で感じた
ことを表現する姿勢を一生貫いたからだと思います。
遺作となった「12」に対し美術家のリー・ウーファンさんは
「言葉や意味から離れ、音そのものの物質性や、音がどう生まれるかを高度に追求する人だった。
情報が氾濫する現代文明に抵抗を感じ、宇宙や生命の強さとつながろうとしていた。」
とのべていますが、音の根源に立ち還り、生命とつながろうとした点、
そして最後の最後まで自分の表現をアップデートし、可能性を追求する姿勢に
自分もそうありたいと、芸術やものをつくる人間として大きく共感します。
戦術の「神話の力」の中に「人間はだれでも英雄である」 という言葉がでてきます。
「大きなものに自分を捧げる力」を一人ひとりがみな持っている。
一人ひとりが持って生まれたその力を自分なりのやり方で生かすこと。
坂本さんもそれを願っているはずです。
その思いを胸にみなさんとともに、これからも生きていければと思っています。