BLOG用01.jpg
土壁の断熱性
 


 知人によるとこのblogの「エコカッコイイ建築」という言葉に反応してくださった方もいらした様子。少しでも刺激になれば幸いである。

 実際最近の世界経済の中、特にアジアの国などは「デザインが良くないと売れない」とデザインを売りにする流れが大きくなっている。建築・ファッション・電化商品・家具・・・など日本を含めたアジアの若手デザイナーの活躍は目覚しい。
 
 デザインが良くなければ長く使ってもらえない・・・自分もデザインをする側として少しでも使い手に愛着を持っていただけるものを作りたいと思う。
 
 ===================
 さて、前回の続きである土壁の断熱についてであるが、再度いろいろな文献を読んだりして考えをまとめているところ。

 まず基本事項として土壁の断熱性について

 土壁の熱伝導率は0.62〜0.69 (W/m・k)でグラスウール10Kの0.05と比較して断熱性能は10倍以下。
(世界的には不十分なものの)現在の日本での断熱基準となる次世代省エネ基準での東京での値はグラスウール10Kが100mm(10cm). これと同じ断熱効果を土壁でとるとすると熱伝導率0.69で計算すると0.69/0.05x100mm=1380mm 
つまり1.38Mもの壁が必要となる。
 
(熱伝導率・・・熱伝導率とは物質内の熱移動のおこりやすさを表す係数。
                  熱伝導率が低いほど断熱性能が高い。)

 つまり、断熱だけ見ると残念ながら土壁は断熱材とはいえない。
では、なぜ土壁の家は「夏涼しく、冬暖かい」といわれるかというと土壁は熱容量が大きいからである。
 土の熱容量は約1600KJ/㎥℃であるのに対し、断熱材は20程度でしかなく、その差が約80倍。 たとえば「暖房を切ってから明け方までどの程度室温が低下するか」、で部屋の暖かさを判断する場合は土壁の蓄熱性が大きな効果を果たす。

 これらの点を加味して現代の家にあう土壁の作り方を、全国各地でいろんな設計者の方が試されている。 
以下、続く・・・

 写真:森風エコキャビンの土壁 
土壁の断熱強化のため、土壁の外側に藁と泥を混ぜた泥団子を積んだ


 

Posted by 遠野未来 at 14:56 | ■土の建築・土壁・左官 | comments(0) | trackbacks(0)

エコカッコイイ建築


 どうやら「エコ建築は野暮ったい」という認識はすでに過去のものになったようだ。最近の欧米のエコ建築を見ると、洗練されたデザインや色使いが多く、思わずうなってしまうものが多い。(たまにため息も・・・) 

 エコといわれない限り、どこがエコなのか分からないほどセンスのいい現代建築。・・・いや現代建築がようやくエコロジカルな考えを取り入れ、地に足が着いてきたということだろう。 

 それに比べると日本は一部を除いて、まだこれから・・・という感じであろうか。これまでエコ=素朴が主流であった。建物に色を使うことも控えめだし、木は木のまま、屋根を緑化した建築も草ぼうぼうが一番良い・・・という感じで素朴に使うことが多い。しかし近年素晴らしいデザインのエコ建築が少しずつ見られるようになってきたのは嬉しい。屋根や壁面の緑化もとって付けた感じではなく、自然にデザインに溶け込むようにつくられるようになってきた。

 日本の民家はパッシブ建築の原型的な要素が多く含まれ、日本はパッシブ先進国でもある。日本型のパッシブ建築やエコ建築を作れるかは、今後の我々の課題である。

 その中で既存の古い日本の住宅をどう改装し、どうエコ建築にしていくか・・・・そこでポイントになるのが土壁でできた既存の古い住宅の断熱性の強化だ。
 
 土壁と断熱に関して、今年のエコキャビンでやった事例も踏まえ、何回か書いてみようと思う。

 写真:eco ARCHITECTURE ueban style (publish by evergren)より

Posted by 遠野未来 at 09:24 | - | comments(0) | trackbacks(0)

パッシブ建築と土壁


 現在計画中の みらいのいえ で改めてパッシブ「建築と土壁」について考えている。

 これまでも土壁の蓄熱性を居住性に生かせないか・・・と計画したことはあったが、窓が小さく集熱量が不足だったり、内部の土壁にうまく陽が当たらなかったり・・・となかなかうまくいかなかった。それもエネルギーより、デザインと雰囲気重視だった自分を反省している。

 パッシブシステムの定義は一般に「建物に流れる熱を特別な機械装置を用いずに、輻射、対流、伝道によって自然に行い、建物自体の性能によって熱の流れをコントロールすることによって暖房、冷房の効果を得る」とされる。(自然エネルギー使用のためのパッシブ建築設計手法辞典「彰国社」より)。深い軒、土間、上部の煙抜き窓など日本の民家も先人の知恵で同じ原理にのっとっている。

 内部にガラスを通し直射日光が当たるがあればそこに蓄熱し、冬の夜間その放熱で部屋を暖かくすることができる。今回の内部の土壁もその効果を狙っている。
前掲書によると蓄熱体の厚さは「土壁の場合20〜35cm以上がよいとされている」とある
。それは日本の土壁では蔵の壁の厚み。

 その厚みを土壁で作るなら、塗り壁では蔵のように何層にも土を積み、塗り重ねるか、版築(土をつき固めて作る工法)か日干し煉瓦積みか・・・しかない。実際性を時間と手間を考え考慮すべき時・・・

 写真:みらいのいえ 内部模型 :テクスチャーのついているRの壁が土壁予定部分

Posted by 遠野未来 at 22:03 | ■設計・現場 | comments(0) | trackbacks(0)

Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< November 2008 >>

Profile

Bookmarks

Recent Entries

Categories

Archives

Recent Comments