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■ 版築Library 東京の土の壁4 ECC ヴェネツィア・ビエンナーレ建築展へ向けて / Tokyo Recycled earth Toward ECC Venezia Biennale

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● プロジェクトの経緯

 

 このプロジェクトはこの後約2週間の乾燥期間を置き、撥水材を塗って最終仕上の予定です。

今後の展望のお話をしたいと思います。

 

このプロジェクトのきっかけは、今年予定されていた「ヴェネツィア・ビエンナーレ」にあります。

 

 ヴェネツィア・ビエンナーレは国際建築展と同時に行われる「もう一つ」のビエンナーレがあります。

それがNPO財団ECC(European Cultural Council) が主催し、世界150組の建築家が出展する建築展

’TIME SPACE EXISTENCE’です。

 国際展が国対抗の万博だとすると、こちらはECCのキュレーションにより、

文化財の建築を中心とした会場で世界の若手から大御所まで、

毎回150組以上の建築家がフラットに展示するレビューの場です。

 こちらも半年の会期で毎回60万人が来場する大きな展覧会です。

 

 ありがたいことに昨年当事務所にお声がけがあり、ご縁があってNI-WAさんと共に

出展させていただくことになりましたが、今年のコロナで来年に延期になり、

その前に第一弾として東京で実現したのが今回のプロジェクトです。

 

 

■土の建築 コンセプト JINEN  作為と無作為、構築と非構築

 

 

 そこで我々のチームが日本から海外に向け打ち出そうとしているのが「土の建築」による

 

 

’JINEN’

 

 

というコンセプトです。

 

日本には西洋から natureという言葉が入る前、

 

「おのずからしかる」(自ずから然る)=自然(じねん) 

 

という言葉があり、それは

「自然のなりゆきにまかせる。」「人為がないあるがままのあり方。」・・・など

日本人に根付いていて、人と自然の関係も「無作為」で一体であると考えられていました。

 

 近代ではそのような考えは、「自然へのよりかかり」であり否定的な意味で考えられてきましたが、

人間中心主義の成長の思想が地球の危機まで生んでしまった現在、もともと日本人が持っていた

自然の力への「直感的感応力」を再評価し、現代の美意識として日本から世界に発信できれば

というのがその思いです。

 

 ※ 自然(じねん)についての日本文化と近代建築についての議論の詳しくは

建築家・磯崎新さんの著作 「建築における「日本的なもの」 」をお読みいただければと思います。

 

●建築で土を使う意味

 

 私は建築で土を扱ってきて、

 

「自然に逆らうことはできない。」

 

 といつも感じます。

 

冬は土が氷って仕事ができませんし、手順を逆にしたり省いたりして簡略化できないところが大きくあります。

天候と季節に大きく左右され、それを受け入れ、自然に従うことがスタートになります。

 

しかし、だからこそ自然や時間と一体となったものができたときの 「よろこび」や「かけがえのなさ」

があります。

 

 また建築的を設計する上で私個人として、西洋建築の基本である「構築」という概念が自分の中で

ずっと「違和感」があり、それを超える「非構築」「直感」「無作為」・・・というコンセプトで建築をつくりたい

という思いがあります。

 その思いを表現できることが、「環境負荷の少なさ」「心地よい空気」とともに自分にとって「土」を使う

大きな理由のひとつです。

 

●ヴェネツィアへ向けて

 

 ヴェネツィアでは日本的空間として「中と外が一体となる空間」を土を使って展示したいと考えており、

今回の作品も我々が考えるJINENの空間の一つです。

 

 これから1年間かけてコンセプトを練りながら日本とイタリア、そして世界を結び、

土の建築の有効性をアピールする展示にしたいと考えています。

 

 現在、現代における土の建築は、国際的にヨーロッパ・アフリカ・北南米・中国・・・など他国

に押されていますが、ぜひ日本から世界への発信を目指したいと思っています。

 

 ぜひ、今後も進捗状況をご紹介させていただこうと思います。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

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#残土再利用、#東京の土、#東京建設残土、

#関東ローム、#版築、#Rammed Earth、#JINEN,#じねん、#自然

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未来をつくる土の建築/ eartharchitect

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Posted by 遠野未来 at 21:42 | ■九段版築ライブラリー | comments(0) | -

■ 版築Library 東京の土の壁3 作業時間の振り返り / Tokyo Recycled earth construction time

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■版築Library 施工 振り返り

 

 今回の版築Libraryの施工面、作業時間について振り返りたいと思います。

 

 まず、今回の施工は大工さんなしで

 

 「すべて左官さんだけでつくった」

 

ことに特徴があります。

 

 実際は今回お庭の職人さんにも参加していただいていますが、すべて斎藤左官の斎藤さんの主導と

木の型枠も斎藤さんご自身による加工でできており、「木」ではなく、「土」が主体の建築です。

 

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■ 施工と作業時間について

 

 この壁の土の体積は2.45M3です。

 

この版築壁をつくるのにどれだけ時間がかかったかですが、

基礎・型枠・突固めを入れて休憩を除いて1日実質6時間作業とすると

6hx6日=36時間。

 

その前に斎藤さんによる型枠や部材制作の下準備、そして土の搬入・搬出

が約1週間ありますので、その時間を 6hx6日=36時間として加えると

 準備36h+現場36h=72時間。

 

合計72h/2.45M3=29.3h/M3 

 

 ゲルノート・ミンケさんの著作「土・建築・環境」の中で

人力で行われる伝統的な版築壁の作業量

(下準備・移動・施工を含む)は20〜30h/M3とありますが、

その範囲で標準的な手間がかかっていることには違いありません。

 

 また人工に関しては、現場6日間で平均4人工で計23人工でした。

 

現場作業は 約10人工/M3 といえそうです。

 

この他に斎藤さんの下準備、土の搬入搬出があるので、

それを入れるとやはり30〜40人工かかっていて、

合計では12.2〜16.3人工/M3 となります。

 

これ以上時間をかけると工事として現実的ではない時間とコストになります。

今後版築を一般化するためにはやはり、省力化・効率化が必要です。

 

■左官さんによる突固めの時間

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ただし、突固めだけで考えると 5hx3日=15時間。15h/2.45M3=6.12 h/M3 。

 

参考に我々が前橋工大でやったワークショップの壁は授業の中で、プロでない学生の作業と

ゆっくり時間をかけてつくったということで

1.7x1.8x0.45M=1.37 M3 の壁をつくるのに5日かけていて

1日6時間の作業とすると6hx5日=30時間

 30h/1.37M3=21.8h/M3。

 

21.8/6.12=3.56 

 

・・・なんと学生に比べ、3.5倍も短時間でつくられたことになり、おどろきです。

 

ちなみに労働量は 人力での20〜30h/M3が

コンプレッサー式の機械を使うことに最大 2h/M3まで圧縮できるとあります。

1/10の時間でできる版築。

 

やはり、今後の版築の効率化と一般化には「機械化」の話はさけて通れないと思います。

 

今後日本での可能性として、さらに試みたいと思います。

 

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Posted by 遠野未来 at 10:09 | ■九段版築ライブラリー | comments(0) | -

■ 版築Library 東京の土の壁2 くぼみの場 / Tokyo Recycled earth Inner space

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●内部空間と飾り棚

 

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 版築でできたくぼみの外部と内部の様子です。

 内部は幅と奥行きが約1x1.2mの楕円で入口部分が60cm弱の空間です。

中から見た切り取られた庭の風景が奥行きを感じさせます。

 この中に3つの飾り棚をつくりました。

本や小物を置いて、お気に入りの空間をしつらえることができます。

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■現代の空間として

 土の壁は光と影によってかなり印象が変わります。

この版築壁は基本的には1300年前の法隆寺の土塀と変わらない構法ですが、ご覧になった方は、

モダンで現代的な印象をお持ちいただいたようです。

皆様はいかが思われるでしょうか?・・・

 

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Posted by 遠野未来 at 14:36 | ■九段版築ライブラリー | comments(0) | -

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